心の傷と大切な人との関係

 大切なのに、失いたくないのに​、なぜ上手くいかないんだろう?

あなたは森の中を歩いていて、赤と黄色の実をつけた木を見つけます。赤い実は甘くておいしいのに、黄色い実はとても苦くてお腹が痛くなりました。更に森の奥に進むと、また同じような木があり、赤と黄色の実がなっています。

 

あなたはどちらの実を食べますか?

 

おそらく赤い実ですよね。過去の体験から「赤=甘い、食べても大丈夫」「黄色=苦い、食べるとひどい目にあう」という方程式があるからです。こうした関連付けを「スキーマ」と言います。中には、赤も黄色も両方食べない選択をする人もいるでしょう。その人のスキーマが「木の実=苦い、食べるとひどい目にあう」かもしれないからです。同じ経験をしても、受け取り方やどの部分が記憶に残るのかは人によって異なります。

 

スキーマは、私たち誰もが持っているものです。更に言うなら、私たちの行動の大半は、可能性よりも予測される結果(つまり、スキーマです)の準備をするためのものです。この仕組みは、私たちをいろいろな形で手助けしてくれます。スキーマのお陰で、私たちはお腹が痛くなる黄色い実は口にしませんし、大きな熊と素手で戦うこともしません。またスキーマが前向きで建設的であれば、私たちのやる気や努力を維持するためのパワーにもなります。(例:毎日努力を続ければいつかは結果が出るだろう。だからもう少しがんばってみよう。)

 

問題は、否定的なスキーマが実際よりも過大に評価されていたり、広範囲に影響を及ぼす場合に起こります。その場合、否定的なスキーマは私たちの日々の行動を著しく制限します。このような否定的なスキーマの多くは、傷つく体験をする際に構築されます。例えば、大切な誰かから裏切られたとしましょう。その際に構築される可能性のあるスキーマの例をあげてみます。

 

人を信用すると傷つけられる。

私は最も親っている相手からも大切にしてもらえない人間だ。

私は人を見る目がない。

世の中に、信用できる人なんていない。

誰かと親しくなっても、結局相手はいなくなってしまう。

 

極端に聞こえるかもしれませんが、これらは全て自分の身を守るために必要なスキーマです。痛い思いをした時、私たちがまず考えるのは「もう二度と同じ痛みは体験したくない」ということです。その思いが強ければ強いほど、その目的を達成するためのスキーマが構築し維持されます。スキーマが習慣化されると、それを意識することもなくなり知らないうちに私たちの行動に反映されるようになります。

 

そして、また大切に感じる誰かに出会ったとしたら?

  

大切に思うほど、失いたくないと思えば思うほど、スキーマとの葛藤が始まります。自分を守るために築き上げた過去のスキーマが、私たちの新しいニーズや状況の邪魔をし始めます。コントロールが難しい感情(特に怒りや見捨てられ感)や、自分でも理解に苦しむ言動の原因の多くは、こうした過去のスキーマによるものです。もう二度と傷つきたくないと思うのは当然です。誰もがそう思うでしょう。けれど、過去の傷があなたの現在や未来までも傷つけ続ける必要はあるのでしょうか?何よりもあなたはそれを望みますか?

​あなたにはそのサイクルを止めることができるのです。

 

スキーマは、最初(プログラミング)がそうであるように、修正(リプログラミング)が十分に可能です。そのためには、次のステップが必要になります。

 

(1)あなたが問題だと感じている大切な人とのやり取りでの感情や言動を振り返る

(2)(1)を通してあなたの中のスキーマ、特に強い影響を与えているコア・スキーマを特定する

(3)コア・スキーマに関連する過去のつらい関係について考える

(4)過去と現在の人間関係を比較しながら、今の状況に適した新しいスキーマの「可能性」について考える

(5)このスキーマをベースに、新しい感情反応や言動の「可能性」について考える

(6)新しいスキーマに基づいたやり取りを実際に練習(ロールプレイ)する

(7)練習した言動を、実際に相手とのやり取りで行う

 

このステップは、STAIR/NSTの治療法の中で用いられる、感情調整と対人関係のスキルトレーニングの部分です。コア・スキーマや新しいスキーマの可能性を考えるプロセス自体が、大きな発見であるのですが、本格的な変化は(6)と(7)の実際の行動を通しての練習の繰り返しによって起こります。

 

感情や思考の変化が行動の変化をもたらしますが、行動することで起こる思考や感情の変化は非常にパワフルです。何かを本質的に改善しようとするのであれば、この感情・思考・行動のつながり全ての部分に働きかける必要があります。

 

大切な相手から傷つけられる、また失ってしまうかもしれない不安ほどつらいものはありません。その不安から逃れるために人とのつながりを避けることほど寂しいこともありません。そんな風に苦しむ必要はもうないのです。過去の傷がどんなに深いものであったとしても、あなたには今と未来を変えていく力があります。そしてそのための方法も存在します。「幸せになりたい」そう強く願ってみませんか。そこから最初の一歩が始まるはずです。

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Sayaka Kawase, Ph.D. LCSW

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